コラム本文
相続開始前の遺産分割協議
Q 私と妹は、父が亡くなる前に、もし父が亡くなったら、父名義の家は私が相続し、その他の財産は妹が相続するという取り決めをし、書面に残しておりました。その後、父が亡くなり、取り決めの通りに遺産を分割すると思っていたら、妹が「父の生前の遺産分割協議は無効だから、改めて遺産分割の協議をしよう。」と言ってきました。妹の言うことは正しいのでしょうか?
A 結論から申し上げますと、妹さんの言う通り、改めて遺産分割協議をする必要がございます。
民法では「共同相続人は、・・・いつでも、その協議で遺産の分割をすることができる。」と定められていますが、この“いつでも”の範囲に相続開始前の遺産分割協議が含まれるのかという問題になります。
そもそも、遺産分割というのは、共同相続した遺産を各相続人へ分割するという手続ですので、相続人、および遺産となる対象範囲は、相続の開始によって初めて確定することができます。このため、その協議についても、相続開始後に各相続人が協議して合意したものでなければ、その効力は生じません。このようなことから、上記の民法の定めが、相続開始前の遺産分割協議の効力までを認めた規定とは考えることはできません。
よって、ご質問の妹さんの言う通り、相続開始前にした遺産分割協議は無効となりますので、相続開始後、改めて遺産分割協議をする必要がございます。
もっとも、相続開始前になされた遺産分割協議でも、相続開始後に各相続人が追認すれば、有効なものとして取り扱うことは可能です。
まとめ
相続開始前になされた遺産分割協議は無効です。相続開始後、改めて各相続人で遺産分割協議をする必要がございます。